僕がカードを捨てた理由−カードの並べかえで発想はできるか?

挨拶

私がMoEで採用している方法に、今までカードを使ってきたひとは違和感を感じると思います。それは、MoEはカードとは異なる思想を実現するものであり、カードで用いていた方法をそのまま移植したのでは無いからです。

カードによるデータベース

カードを用いた発想法は、次のような過程をたどります。

  1. データベースの作成
  2. データベースを使うことで、雑多なアイデアを結びつけ発想を行う

データベースの作成は、一枚一項目でカードに思いついたことを書き、それをひたすらためるということで行います。数ヶ月、数年にわたってためることが前提とされています。
このデータベースは、カードをくることで雑多な、思いがけないアイデアを結びつけ、それによって発想をするという使い方を想定しています。

ここでためたカードのうち、何枚かを使って新しいものを生み出します。そのときは、各カードにタグを付けるなり、索引を付けるなりの、原本をいじらない形での工夫をします。データベースを作るためには、その原本は一つの箇所にためていかなければなりません。従って、それが編集されなおしたり、その一部が失われたり別の場所に移動したりすることはありえないわけです。

カードシステムのPCへの移植

私は、最初にPCで発想を行おうとしたとき、「いかにしてPCでカード型のデータベースを構築するか」を追求しました。
その場合、一ファイル一項目形式は、一つのテキストファイルにタイトルを付けたもので代用します。そしてそれを、一つのフォルダに時系列で保存していきます。
カードをくることは、Grepや、複数のテキストファイルを連続してみる方法、タイトルで内容を把握する方法で代用します。他には、タグをファイル名に付けてみたりもしました。

死蔵問題

そのとき突き当たった問題は、死蔵でした。どうやっても、過去に書いたアイデアを利用する方法がうまくいかないのです。

Grepをかけるときには、Googleで何かを検索するときのように、何かの問題意識を元にその答えを求め、関係していそうな単語をかけるのですが、そもそもヒットしないこと、ヒットしても問題意識が異なっていて使い物にならないことが多いのです。

タグは、連続性を保つことができないという理由で失敗します。その時々で持っている問題関心か異なっている為、数ヶ月、数年にわたって連続した一つの有用なタグを付けることができないのです。結局は、フォルダの中には一時期にわたりまとまらない形で、後に利用することもできない、一つのタグがついた一群のアイデアファイルがあるだけ、という状態になります。

結局は、最近書いたもののうち、数個のみを一覧表示で閲覧することで、再生産を行っていました。しかし、これは過去にためた膨大なアイデアメモが全く無意味であることを意味します。

ここにおいて、カードの方法をPCに移植する技術的な問題ではなく、そもそもカードが前提としている、「アイデアをデータベースにすれば発想が出来る」という思想自体が間違っているのではないか、と考えたのです。アイデアというのは、その時々の課題に従って生じるものであり、時間がたつと無意味なものになる。そうである以上、いくらデータベースを拡大し、それを運用する技術を追求しても無駄なのではないか、と。

イデアのデータベース化に意味はない

カードを用いる方法は、雑多な情報に圧倒されることから、何らかの発想が生じるのだという想定をしています。だから、過去のアイデアであろうと何であろうと、そこに優劣はなくただためればいいとする。いかにして雑多な情報を集め、雑多な場を提供するかということが追求されているのです。

ですが、雑多な情報があふれている状況というのは、わざわざ自分の部屋でカードをくるという仕方で再現しなくても、現実ではいくらでも転がっているわけです。雑多な情報で刺激を受けたいなら、外に出ればいい。わざわざ、それを自身の関心に従い、カードで一つの項目として取り出した後、またそれをカードボックスでごっちゃにする。全く無意味なことをやっているわけです。

現実的必要性により発想は要求される

それに、発想というのは何か現実的な必要性があって初めて求められるものです。そしてそれは、雑多な情報の中からノイズを省くなかで核のみを取り出し、必要な情報のみを集めることで得られるものです。
このとき必要なのは、アイデアの数ではない。何もないのに、発想をしようということはないのです。その時々で、何らかの課題を抱えており、それを解決しようと頭は動く。けれども、アイデア自体は脈絡無く生じる。そしてそれは、大抵は形にならないまま失われてしまう。そこで、関係するもののみ取り出し、全体を見渡せるようにし、自分の課題は何でそれにはどう対処するのが適切なのか、を見つけるのです。

イデアを集めること自体は、必要条件ではあるのですが、それが全てではない。これは、あくまで一つの過程でしかないのです。そしてそのメモは、ただためるだけではなく、積極的に書き換え、不要なものを廃棄していかなければならない。データベースの構築は最初から否定しなければならないのです。

というわけで、どう発想法を位置づけ直すかの話になるのですが、それは...

TO BE CONTINUED...!!!