デジタル知的生産術の急所−タイトルをどう実装するか

挨拶

どうもつかさです。
しばらく、MoEの理論的な面を書くかもです。

テキストファイルが軸

メモを用いて発想をしようとした場合、メモをためるということが前提になります。そのうえで、そのメモをどう活用するかで様々な工夫がなされるわけです。「メモを軸にいかに運用するか」ということが、この手の知的生産術の定義になると思われます。これは同時に、「形式として均質化したメモを一カ所にためる」ことを意味します。たとえばカードだったら、書式やカードは統一して、それを一つのカードボックスにためて、ということをしますね。

これをPCで行おうとした場合、テキストファイルを軸にすることになります。理由は、ワードや一太郎などのワープロソフト形式に比べ、軽くて汎用性があるからです。そしてこのファイルを、一つのフォルダに保存していくことになります。
従って、PCの場合だと、「個々のテキストファイルを軸に、それをどう扱うか」が課題になります。とりあえず、ここまでが前置きです。

内容を把握する手段の必要性

そのとき、タイトル(と連動ビュー)が必要になります。メモを活用するときには、そのメモを一々エディタやビューアで開いて、中身を確認するというのは実用的でないからです。
メモを書くときには、必ずタイトルを付けるようにする。そして、メモを用いる際には、テキストファイルが入っているフォルダ内のメモの一群から、今関心があることに関係ありそうなのをぱっとタイトルを見て判別し、いくつか選んで、それを元に何か作業をする、ということになる。

扱う手法二つ

タイトルをテキストファイルでどう扱うかですが、二つの方法が考えられます。

  1. ファイル名をタイトルにする
  2. テキストファイルの一行目をタイトルにする

ファイル名をタイトルにする、というのはそのままですね。たとえば、「MoE−テキストメモの考察」いうタイトルにしたいのなら、ファイル名を"MoE−テキストメモの考察.txt"とするわけです。

テキストファイルの一行目をタイトルにする場合は、ファイル名自体は日付などから自動的に付けるようにして、テキストファイルの中身の一行目を、タイトルにするわけです。howmなどはこの形式ですね。howmでは、ファイル名は2010-06-13-174028.howmみたいに日付と時刻から自動でつけられます。

ファイル名はタイトルにできない

ファイル名をタイトルにするという試みは、メモをためるという用途では不適切だと思います。できるだけ余計なことを意識せずに気楽に書けることが、メモという性質上必要になるのですが、それとそぐわないからです。理由を順に見ていきましょう。

同一タイトルにできない

先にも言ったように、メモは、テキストファイルの形式で一つのフォルダにためることになります。そのとき、同一のタイトルを付けることが出来ません。ファイル名が重複してしまうからです。
よって、一々ファイルを作るときや、タイトルを変更するときに、そのフォルダ内に同じタイトルのファイルがないかを一々意識しなければならなくなります。面倒です。

タイトルが最初から決まっているわけではない

イデアメモの場合は、書き出したときにタイトルが決まっているわけではありません。書いている途中で、何を書きたいのかがはっきりする、という場合があり得るわけですね。タイトルを決めずに内容を書き、そのあとでタイトルを付ける。あるいは最初に書いたタイトルを途中で変える、ということがよく起こります。タイトルは、好きなときに付けれて、好きなときに変更できる方がいい。けれど、ファイル名だとその融通がきかない。
逆に言えば、それがある程度固まったものの場合、あるいは外部に提出するものとして最初から目的が決まっているものの場合(論文だとかレジュメだとかでしょうか)はファイル名をタイトルにしても問題なく、Everythingやfenrirの検索にひっかかるという点で、そのほうがむしろいいわけです。

一行目をタイトルに

というわけで、テキストファイルをメモとして利用する場合、一行目をタイトルにしたほうが扱いやすいのです。しかし、これを実行するには解決すべき問題があります。

それは、「どうやってテキストファイルの一行目を一覧表示するか」です。ファイラでも何でも大抵そうですが、一行目を一覧表示してくれるソフトというのは、特殊すぎてあまりないわけです。

二つの解決法

そこでそれを解決する方法です。
二つの方向性があり得ます。

テキストファイル自体を変更

私が最初に試みたのは、これでした。このときは、主にTextTreeを使ってメモの作成をしていました。

TextTree

メモの記述の際には、一行目をタイトルにして、ファイル名は自動で適当につけます。
後でそのメモを利用するときに、あらかじめ作っておいた「一行目をファイル名に反映させるプログラム」を実行します。すると、特定のフォルダにある全てのメモファイルのファイル名が、タイトルにリネームされ、タイトルをファイラで表示できる訳です。
このようなプログラムを、rubyで実装しようとしましたが、当時はプログラムに全く詳しくなかったという理由で、途中でやめます。あと、何か大がかりな感じがしたのも理由です。

ソフトで一行目タイトルの表示

というわけで、次に試したのがこれです。
メモのテキストファイル自体は変更せず、それを表示するソフトの側で変更するということですね。こちらのほうがスマートです。ViewLines、howmなどが選択肢としてあるでしょうか。
ですが、使い勝手としては今ひとつ。これだと、ファイル自体を別の場所に移動したりはできないのです。これは、死蔵という問題を解決できないことを意味します。だけど、ファイル移動ということをしようとしたら、それはもうファイラの領域に入ってしまう。けれど、一行目のみを表示する、などという特殊な要求を満たすようなファイラなど無いわけです。

ViewLines−当時はこれとTextTreeを利用していた

当時メインで使っていたあふで、一行目表示はできなくても、連動ビューだけでも実現できないかを追求したりしました。そのために、ポチエスのテキストビューア版と組あわせるだとか、連動ビューアをAHKで試作して見るだとか色々試行錯誤。
結局たどり着いたのがPPxです。以前書いた、コメントファイルを利用する、あれですね。これだと、ファイル自体に変更を加えなくても、コメントファイルを編集するだけで、一行目をタイトルとして表示することが可能になります。これで、ほぼ満足できる結果になりました。

PPxによるファイル名表示

PPxによる一行目表示

MoEでPPxを使う理由

だから、PPxを使っているのは、現状PC上でメモをためる知的生産術を行う場合、これ以外の方法が不可能だ、という理由によるのです。一行目のタイトル表示を、ここで述べたような仕方でできるファイラはこれのみです。僕がPPxが好きだから、その方法を紹介している、というよりはこれ以外の選択肢が無いという消極的な理由によります(そのうえで僕はPPxは好きだしファイラの中では一番使いやすい)。

まとめると、

  1. PCでメモを扱う場合、一つのフォルダにテキストファイルをためることになる
  2. それを利用するには一行目をタイトルにして、それをファイラでファイル名のように表示する必要がある
  3. これができるのはPPxのみである

という三段論法によって、MoEではPPxを使っているわけです。

けど、知的生産でPPxを使うって、ハードル高すぎじゃねと自分でも思ったりします。それ以前にファイラを使うという事自体、結構ハードル高いなあという気が。PPxを使わないひとでもPCで知的生産ができるように、もっと汎用的な仕方で説明できればいいのですが。ファイラの紹介とかPPx導入編とか書いているのもそういう問題意識からです。

MoEのなかで、一番の核はこれだと僕は思ってます。と言うか、デジタルで知的生産を実現するときに突き当たる壁が、これだと思います。まとめ文書を書くだとか、どのエディタをもちいるかだとか、アイデアは何に書きとめるだとかは、まだ改良の余地だとか個々人の好きなようにする余地があると思うけれど、テキストメモ自体の扱い方、という点ではこれ以外ないんじゃないかなあ。
ちなみに、ここに到達するのに数年かかってます。というか、プログラムとかをいじり始めたのもこれがきっかけです。「一行目をファイル名に」プログラムだとか、連動ビューでポチエステキスト参照版みたいなのを作ろうとしてました。もちろん、それほどはっきりと自分のやっていることを意識していたわけではありませんが。多分このブログ始める前とかじゃないかな。気の長い話だ。