メモファイルの移動 howm→work→data

バッファ理論からの流れ

以前、バッファ理論で抽象的なことを書いたのは、この記事を書きたかったからである。

これまで知的生産の技術で書かれたものにおいて、誤っていることが二つある。

  1. データに区分は必要ない。データベースのようにためるだけでいい
  2. PCの場合、メモのノイズを減らすにはGrepで十分である。

前者はカードを用いる梅棹忠夫の発想であり、後者は野口悠紀雄の発想である。
そもそもカードはいかにして編集、コピーという発想をまとめる際に必要になる手間を減らすかを追求したものであり、今となってはアウトオブデートである。この手間はPCでカバーできるからだ。また、カードをくることで発想するというのも間違っており、PoICのように意識的にまとめ上げる作業を入れた方が完成型に近いと思う。野口のほうは、アイデアメモの集まったものをデータベースとして扱うミスを引き継いでおり、また単純にGrepを過大評価している。

データベース

発想のためのメモという点では、データベースというのは不向きである。メモは断片でしかなく、それはある一定の期間をすぎると使えなくなるからだ。ある程度の時間がたったら意図的に結晶化しないと無駄になる。それを数年単位で集めても、それが数年先の自分の役に立つはずがない。

Grep

Grepは、データベースを前提にしたものであるが、同様に使えない。Grepを発想に利用する際には、過去のメモのデータベースからキーワードで雑多なものを抽出することで発想の際の役に立てることと、その発想を小さい核からひとつのまとまったものにするための材料を探すこと、この二つの用途が想定されていると思う。
まず発想についてだが、発想は、普通何となくの理由で求められることはない。発想の最初には、そのときに抱えている問題を解決するなり何なり、大抵具体的な問題意識があるのだ。それは現状の分析か、似たような過去の事例を振り返るかによって作られる。漠然と、何となしに発想をするということ、Grepでたまたま見つけたものを核にするということは発想の本質ではないのである。
考えをまとめるときにも、そのときに必要になるのはある程度まで洗練された情報である。従って、アイデア段階のものは全く利用できない。過去に、そこからまとめ上げたものであっても、大抵使えない場合が多い。
つまり、どちらにしても使いものにならないのである。

方針

従って、先に挙げた二点を逆にして次のことが導かれる

  1. データベースを作る必要はない。
  2. PCの場合は、メモのノイズを減らすのにはGrepで不十分である。まとめるということを考えたときには別の方法が必要である。

これは、メモを最初に蓄積するバッファフォルダ(僕の場合はhowmフォルダ)は定期的に更新し、ノイズを減らしたほうがいいということであり、同時に関係するものをGrepよりノイズを減らす仕方で抽出する方法をみいだすことである。関係ないメモも含め、パラパラとめくるように見てもあまり効率が良くないのである。

この2つを実現するために、フォルダ移動を軸にするべきである。
ある一定の時期に発想することは、その時期に関心を持っていることについてである。バッファフォルダにあるメモもそれにあわせ、そのときに関心を持っているテーマ2〜4のことが、ランダムに並んでいるはずであり、関係するものだけ時系列で探し出せるはずである。それによって、同じ問題意識から書かれているメモ同士を集め、別のフォルダに移動することでノイズを減らす。これだと、それをもとに核を作り、拡充していくこともやりやすい。

かつ、これはコピーではなく移動ですべきである。ここでの目的は、データをためることではなく問題への対処である。それまでためたものから結論、方針を導いたとしたなら、それに使ったものは不要で忘れてもいいものになるわけだ。バッファフォルダに残っている意味はない。

howm→work→data

これからフォルダ構造の話になるので説明しておくと、僕はフォルダを5つに区分している。そのうち、workフォルダには一時的なフォルダを。dataフォルダには、データを入れている。howmフォルダはhowm on xyzzyで作ったhowmのファイルが保存されるところ。詳しくは、ここ参照。

先に述べたことは、つまりメモファイルが次々と移動していくシステムが適切だということになる。

  1. howmから、処理をすませていないものをworkフォルダ内に移動
  2. workフォルダで考察。それを元に、まとめの文書を作成する。MyDoc内にテキストファイルで。
  3. workフォルダから、考察し終えてアウトプットをすませたものをdataフォルダに

この処理を行えば、

  • howmフォルダは常にノイズが少なく、ある程度の量でとどまっている
  • workフォルダには作業中のメモだけがあって、途中でやめたかどうかも把握でき、途中でやめた場合も他のものの邪魔にならない
  • dataフォルダには、用済みのものだけが残る、というようになる

という状態になる。そして、アウトプットしたものだけがたまっていく。僕は、MyDocというフォルダを作り、そのなかに月ごとフォルダを作ってそこにテキストファイルを保存というようにしている。

全体で見れば、howmに入力されたものが濾過され、dataに不要になったものだけたまる。そして、MyDocにそこから得た結論がたまっていく。これは、複雑な現状が必然の原理のもと把握され、自分の行動がそれに適応したものになっていくことを意味している。